現場連携不足からシステムミスマッチまで【EC事業者の3大落とし穴】
公開日:2025.11.17
更新日時:2025.11.14

WMS導入で最も頻繁に発生する失敗パターンは、関係者間の連携不足、現場ニーズとの不一致、そして拠点間の運用格差です。これらの問題は相互に関連し合い、深刻な業務効率低下を招きます。本記事では、実際の失敗事例とその対策について解説します。

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【失敗例1】取引先・現場との連携不足による業務効率低下
WMS導入失敗の最大要因は、関係者間の連携不足です。システム導入を技術的な問題として捉え、人的・組織的要因を軽視することで、深刻な業務効率低下を招きます。
社内部門間の情報共有不備
営業部門、物流部門、IT部門間での情報共有不足は、WMS導入失敗の典型的なパターンです。営業部門が顧客との約束事項をシステム要件に反映せず、物流部門の現場オペレーションがシステム設計に考慮されない結果、実用性の低いシステムが構築されます。
具体的には、営業部門が顧客に約束した「当日出荷」や「時間指定配送」の要件がシステムに組み込まれず、手作業での対応が常態化します。また、物流部門の「ピッキング効率を重視したロケーション設計」の要望が反映されず、作業効率が導入前より悪化するケースも発生します。
荷主・配送業者との調整ミス
外部パートナーとの連携不備は、システム導入後の運用混乱を招きます。荷主企業の出荷指示システムとの連携仕様が不明確な場合、手動でのデータ入力が必要となり、WMS導入の効果が大幅に減少します。
配送業者との連携では、配送伝票の出力形式や、集荷時間の調整システムが未整備な場合、現場での混乱が継続的に発生します。特に、複数の配送業者を利用している場合、それぞれ異なる要求仕様への対応が困難となり、システムの恩恵を受けられません。
システム導入告知の不徹底が招く混乱
現場スタッフへの事前告知と教育不足は、導入初期の大きな混乱を招きます。従来の作業手順に慣れたスタッフが、突然の業務変更に対応できず、作業効率が一時的に大幅低下します。
特に、パート・アルバイトスタッフの比率が高い物流現場では、システム操作への不安から離職率が上昇し、人材確保がさらに困難になる悪循環が発生します。適切な事前準備と段階的な導入計画の欠如が、組織全体の生産性低下を招きます。
【失敗例2】現場ニーズとシステム機能のミスマッチ
WMS導入における最も深刻な失敗要因の一つが、現場の実際のニーズとシステム機能の不一致です。理論的には優れたシステムでも、現場の実情に合わない場合、期待した効果は得られません。
ロケーション設定の現場軽視
倉庫内のロケーション設定は、WMSの効果を左右する重要な要素です。しかし、現場の作業効率を考慮せずに、システムの論理的な整合性のみを重視したロケーション設計を行うと、作業効率が大幅に低下します。
例えば、出荷頻度の高い商品を奥の棚に配置したり、重量のある商品を高い棚に設定したりすることで、ピッキング作業の負担が増加します。また、商品の特性(冷蔵・冷凍、危険物等)を考慮しないロケーション設定により、法令違反や品質劣化のリスクが発生するケースもあります。
作業フローとシステム仕様の乖離
既存の作業フローを十分に分析せずにシステム導入を進めると、現場の実情とシステム仕様が大きく乖離します。特に、長年培われた効率的な作業手順を無視したシステム設計は、現場の強い反発を招きます。
具体的には、ベテランスタッフが経験に基づいて確立した効率的なピッキングルートを、システムが異なるルートで指示することで、作業時間が増加します。また、商品の特性を理解した梱包方法を、システムが画一的に指示することで、破損リスクが増加するケースも発生します。
スタッフのスキルレベルとの不整合
現場スタッフのITスキルレベルを考慮しないシステム導入は、深刻な運用問題を引き起こします。複雑な操作を要求するシステムを、ITに不慣れなスタッフに強制することで、作業効率の大幅な低下と、ストレスによる離職率上昇が発生します。
特に、多言語対応が不十分なシステムを、外国人スタッフの多い現場に導入した場合、コミュニケーションエラーによる作業ミスが頻発します。また、高齢のベテランスタッフが、新しいシステムに適応できずに早期退職するケースも報告されています。
【失敗例3】拠点間業務フローの不統一による混乱
複数拠点を持つ企業でのWMS導入では、拠点間の業務フロー統一が重要な課題となります。各拠点の独自性を無視した画一的な導入や、逆に統一性を欠いた個別対応により、深刻な運用混乱が発生します。
段階的導入時の運用格差
コスト削減やリスク分散を目的とした段階的導入において、先行拠点と後続拠点間での運用格差が問題となります。先行拠点でシステムが稼働している一方、後続拠点では従来の手作業が継続されることで、拠点間での情報連携に支障が生じます。
具体的には、在庫移動時のデータ形式の違いにより、手動でのデータ変換作業が必要となり、転記ミスや処理遅延が頻発します。また、顧客からの問い合わせに対して、拠点によって回答内容や対応速度に差が生じ、顧客満足度の低下を招きます。
帳票・伝票システムの不備
各拠点で使用する帳票や伝票の形式が統一されていない場合、システム導入後も手作業での調整が必要となります。特に、取引先ごとに異なる帳票要求がある場合、システムの標準機能では対応できず、個別のカスタマイズが必要となり、コストが大幅に増加します。
出荷伝票、納品書、請求書等の形式が拠点ごとに異なることで、本社での集計作業が複雑化し、経営判断に必要な情報の取得が困難になります。また、監査対応時に、拠点ごとに異なる資料形式により、監査効率が大幅に低下するケースも発生します。
在庫データの連携エラーの頻発
拠点間での在庫データ連携において、システム仕様の違いやデータ形式の不統一により、連携エラーが頻発します。リアルタイムでの在庫情報共有ができないことで、欠品や過剰在庫のリスクが増大します。
特に、EC事業者の場合、複数拠点の在庫を統合して販売可能数量を算出する必要がありますが、データ連携エラーにより正確な在庫数が把握できず、販売機会の損失や顧客への迷惑をかけるケースが発生します。
フロントラインの統合システム環境とサポート力
当社では、OMS・WMS一体型のEC自動出荷システムを導入し、受注から出荷までの一連の業務を効率的に管理しています。豊富な物流経験と専門知識により、現場の実情を考慮したシステム選定から運用定着まで一貫したサポートを提供いたします。関係者間の連携不足やシステムミスマッチを防ぐため、段階的な導入計画と継続的なフォローアップにより、お客様のWMS導入成功を確実にサポートします。
まとめ|連携とマッチングが成功の鍵
WMS導入における3大失敗パターンは、いずれも「人」と「システム」の調和に関わる問題です。技術的な優秀さだけでなく、現場の実情を理解し、関係者全員が納得できるシステム設計が成功の鍵となります。次章では、ベンダーサポートや予算管理に関する失敗事例について詳しく解説します。

